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インタビュー| 高橋ちさ

【インタビュー】クリエイターの育児論〈第一回〉漫画家・木下晋也さん(後編2/2)

第一線で活躍中のクリエイターに「育児論」を伺います。聞き手は、PR会社で主にBtoB企業の広報として活躍している高橋ちささん。出産を2月に控え、「出産や育児について、色々な方の話を聞いてみたい」ということで、高橋さんがいま「お会いしてみたい」という方にお話を伺っていきます。第一回目は漫画家の木下晋也さんです。(前編はこちら

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──木下さんが父親の自覚が芽生えたのっていつ頃ですか?

木下 気がついたら、というか徐々に父親になっていった気がします。正直、生まれてすぐの時期は全く実感が湧かなかった。名前をつけることで父親の実感が湧くっていう話も聞くけど、名前をつけたところでいきなり親としての実感がわくという感じでもなかったです。こどもの世話をしていくうちに、少しずつ父親になっていっているという感じ。

ただ、こどもが生まれる前に比べて、こどもができてから考えもしなかったことが起こったりしますが、こどもがいる生活のほうがしっくりきます。

(同席していたP_TREE森) 男親が父親の実感をすぐに持てるかというと、なかなかむずかしいと思う。自分のこどもだから、やっぱり誰よりも愛情はあるんだけど、母親と違って母乳をあげたりお腹を痛めて産んだわけじゃないから、身をもって父親になったと感じるのが難しい。オムツをかえたり、面倒をみることはできるけど、親になったということを実感するのには、やっぱり少し時間がかかりますよね。

木下 そうですね。なんの疑いもなく自分を頼ってくるときや、抱っこを求めてきたりとか手を握ってきたりと無条件に甘えられると、「あー、自分のことをお父さんとおもってきてくれているるんだな」と、伝わってきてグッときます。

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おやおやこども。【第3話】0ヶ月より

──ちなみに、出産のときやお仕事をしている中で、こどもができるって不安はどうでしたか?

木下 子育てと仕事を両立していけるのか…という不安は少しありました。ただ妻がライター業をやっている人だったので、いざとなれば“妻も自分で働ける”という保険のような気持ちはありました。その分、不安は少なかったかもしれないですね。

普段は自宅で仕事をしているのですが、こどもができてから生活のリズムが変わったので、仕事の時間、家事育児を手伝う時間、そのバランスというか、切り替えが難しいと感じています。

たとえば仕事中、向こうの部屋から下の子の泣き声が聞こえてきます。妻は上の子の世話をしているので、この状態では仕事続けてられないよな…と、とりあえず手伝います。そのうち、お風呂に入れたりいろいろ世話をしたりとしていると、だんだん仕事どころでなくなってしまって…。

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──仕事の時間と自分の時間と、子育てにあてる時間とどういう風に分けていますか?

木下 1日の仕事時間は特に決めていません。ただ、考える時間や集中したいときなど、自分の時間を確保したいときは外に出ます。いまなら行けるかな、と状況を見ながら、「3時間だけ外出してくるね」といった感じで。時間を決めて外に出るようにしています。

とはいえ、3時間外出してアイデアが何もでてこないときなんかは、情けない気持ちにもなりますね。こんなことなら、家で手伝っておけばよかったかなって。

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──クリエイターの方は自宅作業やアイデア出しがあるから難しいですよね。会社員のパパも夜泣きがひどいときとは、次の日の仕事に響きそうで大変ですね。奥さんもイライラするだろうし、どうやって乗り越えていますか?

木下 うちも最初は3人一緒に寝ていましたけど、下の子ができてからは4人一緒では上の子も寝れないということで、いまは下の子は奥さんと、上の子は僕と一緒に寝ています。

うちはいい意味で、妻が僕に対して“過度な期待”をしていないのが良いのかもしれないです(笑)。奥さんの懐の大きさですね。その分、感謝のお返しじゃないけど、ときどき日帰り旅行をプレゼントしたり、欲しいものがあるときは、有無を言わずに買ってあげるとかしています。

家事の分担については、やってほしいって言われているわけじゃないですが、僕は誰でもできる様な単純作業(洗濯やお風呂掃除、ゴミ捨てとか)をやって、奥さんはそれ以外、といった感じで自然と分担ができている気がします。

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──子連れで外出するときなど“ここぞ”というときに、これがあればご機嫌になるっていうものはありますか?

木下 やっぱりミニカーですかね。外出する前にどれを持っていくか聞くようにしています。外食をするときは「何が食べたい」というのではなく、「車のおもちゃがもらえるから、ここのお店に食べに行きたい」という感じで食べに行く店を決めています。いまのところ食べ物はそれほど執着しない子なので、食事よりオマケで釣っている感じです(笑)。

──下のお子さんが生まれたばかりですが、これからどんな風に育ってほしいと思いますか?

木下 自分で考える力を持って欲しいと思っています。そして、相手の気持ちも考えてあげられる人になってほしいです。上の子はまだ4歳ですが、親がこうしなさいとか、こうすれば正しいとか、押し付けないように心がけています。

今は親として選択肢を提示することくらいしかできていないですけど。例えば幼稚園で乱暴をする子がいたとして、そのことについて、後日ぬいぐるみを使って話し合います。「こうされたらどうしたらいいかな?」って言いながら、ぬいぐるみで再現しながら話すんです。

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息子はまだ「どうしたらいい」という答えが出せないときもあるので、すぐに答えを教えるのではなく、一緒に「どうしたらいいかな?」って考えてあげてます。ゆくゆくはどうしたらいいか自分で考えて、行動できる人になってもらいたい。

とはいえ、まだまだ真剣に考えたり真面目な話は数分しかもたいないので、急にお話しの中におばけが出てきて、話が中断してしまうこともありますけどね(笑)。

<インタビューを終えて> 木下さんの作品をずっと読んでたので、今回、直接お会いできて本当に嬉しかったです。作品にでてくるお父さんのままで、穏やかで、おおらかな雰囲気で、インタビューさせていただきやすかったです。そして奥様に対する感謝というか、尊敬の気持ちが節々で伝わってきました。ありがとうございました! 高橋ちさ

★木下晋也さんのオフィシャルサイトでは、先日連載が終了した「おやおやこども。」や、現在好評連載中の「マコとマコト」を読むことができます。独特のテンポで繰り広げられる木下晋也ワールドをぜひ体験してみてください。一度ハマるとくせになりますよ〜。


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おやおやこども。木下晋也(著)
吉本ばななさん推薦!!「何回もぷっと吹いちゃったけど、ここんちの子になりたいな」──父親になった実感ゼロから育児ははじまり、お風呂入れへのチャレンジ、はじめての二人きりの留守番、寝かしつけに苦労したり、時にはお母さんに怒られたりしながらも、少しずつお父さんになっていきます。「日常」をやさしい視点で切り取り、のんびり空気なギャグで描く著者による、妊娠から3歳までの日々を描いた、パパあるある満載!?の育児マンガです。(Amazonより)

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高橋ちさ

高橋 ちさたかはし ちさ

神奈川県出身。ラジオ局お手伝い⇒広告代理店(横浜駅スタジオDJ)を経て、現在は都内PR会社でIT企業、コンサル会社など、BtoB企業の広報を全力でバックアップ中。セミナー勉強会、飲み会の企画立てるの大好き。何かあればご相談下さい。ゲストライターとしてPR Tableにも参加中。執筆記事はこちら
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