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たのしい絵本。| kaku-kaku lab

【第3回】三びきのやぎのがらがらどん

三びきのやぎのがらがらどん

三びきのやぎのがらがらどん
原題『THE THREE BILLY GOATS GRUFF』
作者:マーシャ・ブラウン/Marcia Brown
代表作:ちいさなヒッポ、他
出版社:福音館書店

絵本が大好きというkaku-kaku lab.(カクカク・ラボ)のお二人が、ほんとうにおすすめしたい絵本を紹介していくコンテンツ『たのしい絵本。』。第3回目の今回とりあげるのは、ハラハラドキドキの大冒険が人気の「三匹のやぎのがらがらどん」です。言わずと知れたこの普及の名作を、ご自身の幼少時代のかわいらしい冒険エピソードを交えながらたのしく紹介しています。ちなみに、となりのトトロのエンディングでサツキとメイがお母さんに読んでもらっている絵本が、この『三匹のやぎのがらがらどん』です。
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この絵本のキーワード

「足音リズム」
「怖がらせテク」
「一番はじめの冒険心」

はいけい

1918年に生まれたマーシャ・ブラウンは、三人姉妹の末っ子でした。
父が牧師をしていたので、ニューヨーク州内を転々としていたそうですが、
クーパーズタウンという町で暮らしていたときには、
森や湖で探検を楽しんでいました。

また、姉妹は本を読んだり絵を描いたり、物をつくることが大好きで、
引っ越した先では図書館へとんで行き、童話や画集を好んで読んだそうです。

大人になってからは、図書館でパートの仕事をしながら絵の勉強を続け、
28歳のときに絵本作家としてデビューを果たしました。
それから順調に、さまざまな技法で絵本を描き続け、
1957年(当時39歳)に「三びきのやぎのがらがらどん」を出版します。

クレヨンとインキによって描かれましたが、
頭の中にイメージがしっかりできた状態で制作を始めたために、
5日間で仕上げてしまった作品とのことです。

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彼女は、さまざまな作風で絵本を作り続ける理由について、

「どの本にも同じスタイルの絵を描くというのは、
 私にはやりきれないことなんです。(※)」

「ひとつの本の仕事をしている間に開発したアイデアやテクニックを
 別の本にまで引きずり込まないために、
 私は本と本との間にたっぷりと時間をおき、
 絵を描いたり旅に出ていろんな印象をとりこんだりして、
 次の仕事のための道をあけるようにしています。(※)」
絵本図書館」より引用 光吉夏弥著 ブック・グローブ社

と語っているそうです。

この言葉通り、彼女は、アイデアを練り、絵本製作・出版をし、
旅に出るなどしてアイデアを練るための新しいヒントを探す、
というサイクルで創作活動をしていました。

たゆまぬチャレンジの中で生まれたのが今回紹介するおはなしであり、
その他多くのすばらしい絵本です。
ぜひこの、毎回作風が変わるマーシャ・ブラウンという作家さんの絵本を、
見比べてみてください。

作風は全く違いますが、登場人物の生き生きとした表情や、
コミカルで愉快な動き、力強いタッチなど、
どこか一貫したところも見つかるはずです。

あらすじとかいせつ

あるところに、三びきのがらがらどんというやぎがいました。
やぎたちは、あるとき、山へおいしい草を食べに登ろうとしましたが、
途中の橋の下に気味悪い大きなトロルが住んでいて渡ることができません。
トロルは「きさまをひとのみにしてやろう」と言うのです。

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小さなやぎは、
「たべないでください、
後から僕よりもっと大きなやぎがやって来るから」と言い、
トロルから逃がしてもらいました。

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2番目のやぎも、後からもっともっと大きなやぎがやってくる、
と言ってトロルから逃がしてもらいました。
最後にやってきた、いちばん大きなやぎ。
さてさて、がらがらどんたちは、無事に橋をわたれたのでしょうか・・・?


子どもたちは、毎日大冒険をしています。
危険ではない場所だとしても、
恐くて通りたくない廊下や、入りたくない部屋や、薄暗い物置。
特に小さな頃は、誰しもそういう場所があったのではないでしょうか?

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幼い頃この物語を聞くとき、いつも末っ子のやぎに自分を重ねていました。
普段使っていない部屋に、なぜだか恐くて行けなかったのですが、
兄と一緒にいると虎の威を借る狐さん同様に、全然恐く感じなかったのです。

それがあるとき自分ひとりで、おっかなびっくり、
思い切って、そういう場所に入ったり、切り抜けられたとき、
すごい冒険をしてしまったような、そんな気分になったものです。
なんだかちょっぴり大人になったような、そんな達成感を抱いたりして。

「はじめての冒険」としては上出来だったのかなと微笑ましく思い出されます。

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この物語は、そんな子どもたちの冒険心を刺激するような、
感情移入しやすいハラハラドキドキをたっぷり含んでいます。

そしてなんとも言えないのが、やぎの足音です。
小さな足音、中くらいの足音、ずっしりした足音。
読み聞かせのときに、トロルの恐ろしさの演出と併せて重要なのが、
この足音です。

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私がこの物語を何度も何度も読んでもらいたかったのは、
母の口から発せられるリズミカルな足音や、トロルの恐ろしいしわがれ声など、
多様な音声が聞きたかったからのように思います。
もちろん、迫力のある力強い絵とハラハラドキドキも求めていましたけれど。

こんな風に、見る・聞く楽しみがたくさん詰まった、
読み聞かせがいのあるお話ですので、ぜひ声に出して読んでみてください!

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 kaku-kaku lab. カクカク・ラボ

ホームページ

鹿毛泰成と国重あさにより2014年に結成。建築設計、家具やプロダクトのデザイン活動のほか、絵本の収集や創作、絵本やこども向け展覧会のレポートなど多岐に渡り活動中。
また、2009年から取り組むkoeda plus projectでは主催者の一員として、建築やまちづくりなど専門を活かして活動を継続中。まちや里山、小学校を舞台にして、その土地の素材を使い、「手をうごかすこと、モノをつくることは楽しい!」をテーマに、子どもと一緒に参加できる、モノづくりや環境教育のワークショップを企画・運営。地域の生涯学習・環境学習ツールとして、樹木調査の実施、tree-tagの作成・設置なども行う。執筆記事はこちら
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