「たのしい絵本。」での絵本紹介や、企画展のイベントレポートなどでおなじみのkaku-kaku la.(カクカク・ラボ)の鹿毛さんが、毎年遊びに行っているという絵本の展覧会「おいでよ!絵本ミュージアム」。ちょうど帰省の時期に開催しているらしくて、「すごく楽しくて、展覧会というより遊園地にきているみたい」なんて聞いていたので、とても興味があったんです。いったいどんな展覧会なんでしょうか?鹿毛さんのレポートをどうぞ。
こんにちは、kaku-kaku lab.の鹿毛です。
福岡県福岡市の福岡アジア美術館で開催されていた「おいでよ!絵本ミュージアム」に行ってきました。その時の様子をレポートしたいと思います。(この展覧会は既に会期を終了しています)
福岡市内の、西鉄福岡(天神)駅より歩いて美術館へ向かいました。地下鉄やバスで行くことも出来るのですが、中洲の川など、景色を見たりしながら行くのが楽しいので、歩いて行くことにしました。途中、美味しそうなお店があり、誘惑に負けそうになりながら向かいました。
今回のテーマ「ふしぎなたび」のとおり、展示コーナー別に会場構成も様々で、本当にふしぎなたびをしてるようです。
三浦太郎さん、降矢ななさん、西巻茅子さん、なかやみわさん、田島征彦さん、たむらしげるさん、とさまざまな作家さんの作品で会場が構成されています。
また、古今東西に伝わる民話や昔話の絵本、児童書などの読み物があるコーナーや、のりもの絵本、ロングセラー絵本など、自由に絵本を読めるコーナーもあり、なかなか先に進めません。
あと、この展覧会では協賛しているNTT西日本グループによる、先端のデジタル技術を活用した展示なども楽しめます。
会場入口では、三浦太郎さんの「ちいさなおうさま」の兵隊さんがお出迎えしてくれます。
今回の展覧会で楽しいのが、入り口で配布される王冠を被ってお城(会場)へ入っていく所です。王冠をかぶって「ちいさなおうさま」になった子どもたちが会場中にいて、愉快な空間を作り出すのに一役買っていました。
お城へ入ると、まず「おおきなおひめさま」が待っています。「ちいさなおうさま」と「おおきなおひめさま」の結婚式です。みんな「おおきなおひめさま」と、記念撮影をしてから先に進んでいました。
次にデジタルコンテンツの展示がありました。この展示は、しくみデザインの中村俊介さん協力のもと、作られたそうです。
食卓に並んだお皿を手に取ると、載っていた食べ物が消えしまい、お皿を食卓に戻すと新しいたべものが出てくるという展示です。子どもたちは夢中になって遊んでいました。
次は原画展コーナーです。
降矢ななさんと、西巻茅子さんの原画を展示してありました。今回、原画の撮影は遠慮しましたが、迫力満点の内容を少しご紹介します。
降矢ななさんのコーナーでは「めっきらもっきら どおんどん」「ナミチカのきのこがり」「ともだちおまじない」の3作品の原画が展示されていました。
「ともだち」シリーズは、好きで読んでいたので、原画を見ることができて良かったです。印刷された絵本ではわからない所など、直接見ることで「どのように描かれているのか」がわかり、近くで見られる機会は本当に貴重だと思いました。
西巻茅子さんのコーナーでは「わたしのワンピース」の原画が展示されていました。
「わたしのワンピース」は、今年で生誕40年になるそうです。私も子どものころに見た記憶があり、こんなに長く愛される絵本っていいなと思いました。にじもようのワンピースになる部分は、とても綺麗で素晴らしかったです。
会場には、絵本コーナーが所々に設けられていたのですが。ロングセラー絵本コーナーでは、「ぐりとぐら」や「100万回生きたねこ」「だるまちゃんととらのこちゃん」などなど、懐かしい絵本が沢山おいてありました。
古今東西に伝わる民話や昔話のコーナーでは、子どもたちの人形を懐かしい景色とともにジオラマにした「あかりえのせかい」展(作:入江千春)も見ることが出来ました。
影絵で遊んでいる所や、枕投げして遊んでいる所などなど、携帯ゲーム機などで遊ぶのではなく、素朴な遊びを楽しんでいた時代のいい景色でした。
絵本・児童書コーナーには「花さき山」や「ちからたろう」「八郎」などなど、こちらも懐かしい絵本が沢山おいてありました。
なかやみわさんの展示では、「どんぐりむら」の絵本の世界が立体表現されていました。
ぼうしやさんのコーナーには、どんぐり帽子が置いてあり、いろんなどんぐり帽子をかぶって、子どもたちは楽しんでいました。
どんぐりむらをイメージした絵本コーナーもあり、みんなおもいおもいの場所で絵本を読んでいました。
田島征彦さんの原画展です。「じごくのそうべえ」が有名ですが、33年ぶりに米朝落語(上方落語「小倉船」「兵庫船」)を元に創作された「そうべえ ふしぎなりゅうぐうじょう」の原画が展示してありました。
驚いたのが、この原画は型絵染という技法でつくられているということです。型紙を用いて布地を染める型染は、日本で古くから行われていたそうですが、実際のものを見る機会がなかったので驚きました。
絵本の話の中にサメに襲われている場面があるのですが、海の青い色がとても綺麗で、時間を忘れて見入ってしまいました。
たむらしげるさんの展示コーナーでは、ロボット「ランスロット」の世界をプロジェクションマッピングの技法を用いて表現されていました。手を叩くと映像が変化するので、子どもたちは夢中で手を叩いていました。
その他に、タブレットを使って、自分がお絵かきしたものがおもちゃのまちに現れて動き出す企画もやっていました。自分の描いたものが動き出すなんて、嬉しくてたまらないだろなと思ってしまいました。
会場の最後には、絵本ひろばがありました。まず目に入ってきたのが、「おいでよ!絵本ミュージアム2011」に展示されていた「もぐらばす」の再お目見え。
バスの中に入ることができ、もぐらばすの乗客になった気分になって楽しむことが出来ました。
他に、「あかちゃん絵本コーナー」「のりもの絵本コーナー」「外国の絵本コーナー」があり、テーマに沿った絵本が沢山置かれていて、いろんな所で自由に読むことができました。
親子連れも多数いて、いろんなところで読み聞かせをしていました。
毎回来て思うのですが、「おいでよ!絵本ミュージアム」は、子どもの多さ、そして子どもたちの笑顔がそこかしこに溢れています。
美術館では騒いではいけないとか、静かに鑑賞するものという暗黙のルールがありますが、この展覧会にはまったくそんなものはなく、みんな活き活きとしていて、まさに遊園地に来て遊んでいるようでした。
他にもこの展覧会の良さとして、会場の展示コーナーごとに絵本を読むことが出来るスペースがあるというところです。会場全体で約1000冊の絵本や児童書、紙芝居を楽しむことができたそうで、展示を見て絵本読んで、時間を忘れて楽しむことができる展覧会でした。
毎年違った展示構成で、来年も絶対に来ようと思える展覧会でした。今年の展覧会は既に終わってしまいましたが、来年の夏にはみなさんもぜひ訪れてみてください。
〈レポート:鹿毛泰成 / kaku-kaku lab.〉
[Link] おいでよ!絵本ミュージアム