連載
たのしい絵本。| kaku-kaku lab

【第2回】るるるるる

るるるるる

るるるるる
作者:五味 太郎
代表作:きんぎょがにげた、他
出版社:偕成社

絵本が大好きというkaku-kaku lab.(カクカク・ラボ)のお二人が、これまでにとっても影響をうけた絵本を紹介していくコンテンツ『たのしい絵本。』第2回目は、人気の絵本作家のあの作品をとりあげています。
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この絵本のキーワード

「読み聞かせテク」
なんといってもシンプルな言葉で、読み聞かせがいがあります。

「巧みな色づかい」
原色のような鮮やかでありながら、やさしい色使いです。

「おとなも楽しめる」
読み進めるうちに、大人も心をつかまれ、感情移入してしまいます。

はいけい

作者、五味太郎氏は桑沢デザイン研究所卒業後、工業デザインなどのデザイナーを経て、絵本作家になりました。絵本作家としてデビューしてから約400冊以上の絵本を手がけています。

今回、そのたくさんの絵本の中からこの絵本を選んだ理由は、私達が絵本を集める切っ掛けとなった本だからです。カラーインクで描かれた青い空に、吸い込まれるように本を手にした記憶があります。言葉も絵もシンプルながら、こんなに楽しくなれる絵本はなかなかありません。

カバーにこんなことばが書かれています

これは
音の絵本です。
文字の絵本です。
そして
やがて、ゆったりと
言葉が
きこえてくる絵本です。
お話が
見えてくる絵本です。

このことばの通り、ページをめくり、絵や音を楽しむうちに、おはなしが「みえてくる」絵本です。ですので、今回はあえて、私たちからはあらすじは語らないことにしました。

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▲広い、広い青いそらに飛行機が1機。そしてなぜか「るるるるる」。エンジン音?次のページがどうなっているか気になってしまいます。


かいせつ

大空に飛行機、そのエンジン音が「るるるるる」。
出てくるコトバがほとんど「る」。
ページをめくっても、めっくても「る」。
その中に、時折あらわれる別の文字。

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▲雲に突入。「る」。大きな雲を前に、圧迫感を感じませんか?たった1文字ですが、感情の変化を感じます。

物語の大半は「る」の音だけで進んでいきます。大空を優雅に飛んでいた飛行機は、雲の中に突入したり、飛行機の大群の中に入ってしまったり、いろんな出来事に遭遇します。そのいろんな出来事が、絵とシンプルな言葉だけで表現されています。

シンプルな言葉「る」。ページをめくるたびに変化する「る」。そんな「る」にいろんな意味が込められています。

文字の形もいろんな形をしています。まるい文字、ギザギザな文字、シャキッとした文字。文字の形に感情が表れています。

また登場する飛行機の形や、飛行機の窓をよく見ると、その時の感情が表れていて、安心や不安といった感情が感じられます。この物語のオチに当たる部分である最後のページをめくると、飛行機とコトバの形や大きさにたくましさが感じられ、大事件の後のけろりとした飛行機の姿に、思わず笑みがこぼれてしまいます。

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▲大量の飛行機が向ってきて「ぐ」。ビックリ仰天、大慌て、1文字の変化でそんな感情が感じられます。よく見ると、窓の形が細くなっているので、圧倒されて、焦っているようにも見えます。

この絵本は、言葉がシンプルなので、読み聞かせの時、テンポ、強弱のつけかた、間の取り方など、いろいろと考えてしまいそうですが、不思議と読んでいくうちにリズムに乗って読めてきます。

また、読む度に違う読み方になってしまっても、そこがまた楽しめるポイントになります。読む度に新しい読み方をして楽しんだり、絵だけ見て楽しんだり、楽しみ方がたくさんある一冊です。

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 kaku-kaku lab. カクカク・ラボ

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鹿毛泰成と国重あさにより2014年に結成。建築設計、家具やプロダクトのデザイン活動のほか、絵本の収集や創作、絵本やこども向け展覧会のレポートなど多岐に渡り活動中。
また、2009年から取り組むkoeda plus projectでは主催者の一員として、建築やまちづくりなど専門を活かして活動を継続中。まちや里山、小学校を舞台にして、その土地の素材を使い、「手をうごかすこと、モノをつくることは楽しい!」をテーマに、子どもと一緒に参加できる、モノづくりや環境教育のワークショップを企画・運営。地域の生涯学習・環境学習ツールとして、樹木調査の実施、tree-tagの作成・設置なども行う。執筆記事はこちら
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