るるるるる
作者:五味 太郎
代表作:きんぎょがにげた、他
出版社:偕成社
絵本が大好きというkaku-kaku lab.(カクカク・ラボ)のお二人が、これまでにとっても影響をうけた絵本を紹介していくコンテンツ『たのしい絵本。』第2回目は、人気の絵本作家のあの作品をとりあげています。
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「読み聞かせテク」
なんといってもシンプルな言葉で、読み聞かせがいがあります。
「巧みな色づかい」
原色のような鮮やかでありながら、やさしい色使いです。
「おとなも楽しめる」
読み進めるうちに、大人も心をつかまれ、感情移入してしまいます。
作者、五味太郎氏は桑沢デザイン研究所卒業後、工業デザインなどのデザイナーを経て、絵本作家になりました。絵本作家としてデビューしてから約400冊以上の絵本を手がけています。
今回、そのたくさんの絵本の中からこの絵本を選んだ理由は、私達が絵本を集める切っ掛けとなった本だからです。カラーインクで描かれた青い空に、吸い込まれるように本を手にした記憶があります。言葉も絵もシンプルながら、こんなに楽しくなれる絵本はなかなかありません。
カバーにこんなことばが書かれています
これは
音の絵本です。
文字の絵本です。
そして
やがて、ゆったりと
言葉が
きこえてくる絵本です。
お話が
見えてくる絵本です。
このことばの通り、ページをめくり、絵や音を楽しむうちに、おはなしが「みえてくる」絵本です。ですので、今回はあえて、私たちからはあらすじは語らないことにしました。
大空に飛行機、そのエンジン音が「るるるるる」。
出てくるコトバがほとんど「る」。
ページをめくっても、めっくても「る」。
その中に、時折あらわれる別の文字。
物語の大半は「る」の音だけで進んでいきます。大空を優雅に飛んでいた飛行機は、雲の中に突入したり、飛行機の大群の中に入ってしまったり、いろんな出来事に遭遇します。そのいろんな出来事が、絵とシンプルな言葉だけで表現されています。
シンプルな言葉「る」。ページをめくるたびに変化する「る」。そんな「る」にいろんな意味が込められています。
文字の形もいろんな形をしています。まるい文字、ギザギザな文字、シャキッとした文字。文字の形に感情が表れています。
また登場する飛行機の形や、飛行機の窓をよく見ると、その時の感情が表れていて、安心や不安といった感情が感じられます。この物語のオチに当たる部分である最後のページをめくると、飛行機とコトバの形や大きさにたくましさが感じられ、大事件の後のけろりとした飛行機の姿に、思わず笑みがこぼれてしまいます。
この絵本は、言葉がシンプルなので、読み聞かせの時、テンポ、強弱のつけかた、間の取り方など、いろいろと考えてしまいそうですが、不思議と読んでいくうちにリズムに乗って読めてきます。
また、読む度に違う読み方になってしまっても、そこがまた楽しめるポイントになります。読む度に新しい読み方をして楽しんだり、絵だけ見て楽しんだり、楽しみ方がたくさんある一冊です。