いたずら きかんしゃ ちゅう ちゅう 原題『CHOO CHOO』
作者:バージニア・リー・バートン/Virginia Lee Burton
代表作:ちいさいおうち、他
出版社:福音館書店
絵本が大好きというkaku-kaku lab.(カクカク・ラボ)のお二人が、これまでにとっても影響をうけた絵本を紹介していくコンテンツ『たのしい絵本。』はじまります。絵本選びの参考にどうぞ。
「読み聞かせテク」
擬音語がたっぷり。読み聞かせ難易度は高いけれど、こどもたちは大喜び。
「反面教師」
こんなに心配や迷惑をかけたらダメです。
「時間どろぼう」
少し長いけれど、それを感じません。
この絵本は、第二次世界大戦が起こる少し前に著者バージニア・リー・バートンが、4歳の長男アリストリデスのために描きました。彼女の初めての作品は、子どもがすぐに飽きてしまい、その反省を活かして描かれたのが、本作です。
「自分の子どもにも長く愛される作品を」と描かれているので、私自身もそうだったように多くの子どもたちが、何度も何度も「読んで」とせがむ愛される作品となっています。
原文では、ちゅうちゅうのことが「she」と表記されています。それは、ちゅうちゅうが女の子であることを示すものなのか、ただ機関車が女性名詞だからなのかは、判断が分かれているようです。バートン本人は、一体どちらを想定していたのでしょうか。男の子と思って読むのと、女の子と思って読むのとでは、印象が変わるのか試してみるのも面白そうです。
いつ飛び出して行ってしまうかわからないような、元気いっぱいで、少し危なっかしい子と、ちゅうちゅうの姿が重なり、おとなも子どもと一緒に楽しめる一冊です。
美しい機関車の描写、びゅんびゅんと風を切るスピード感、激しい高揚感と、たどり着いた寂寞(せきばく)の風景との対比、それを声に出して読み聞かせてあげることで、ずっと子どもの心に残るコミュニケーションを生み出してくれる絵本です。
あなたは、大切で大切でしかたない、やんちゃで小さな子に、寿命が縮まるほどの心配をさせられたとき、どんな反応をするでしょうか?
たたきますか?
怒鳴りますか?
泣きますか?
それとも、抱きしめますか?
・・・・・・・・・・
あるところに、真っ黒くて、ぴかぴか光っていて、きれいなかわいい機関車がありました。名前をちゅうちゅうといいました。ちゅうちゅうはいつも客車や、貨車を引いて、駅から駅へ走る生活を送っていました。
ちゅうちゅうは、自信たっぷりの美しい機関車でした。毎日毎日、みんなのために一生懸命はたらいていました。ちゅうちゅうの働く姿は、きらきら輝いていて、みんな羨望のまなざしで見つめていました。
それでも、もっともっときれいで、かっこうよく、速く速く走れることを、証明してみたくなります。
ある日、ちゅうちゅうは考えました。
「あの重い客車なんか引くのはごめんだ、わたしひとりならもっともっと速く走れるんだ。そしたらみんなわたしだけをながめて言うでしょう、かわいい、はやい、きれいな機関車だと。」
そして、ちゅうちゅうはひとりで走りだし、大騒動に・・・。
ちゅうちゅうは、たくさんたくさん心配をかけ、たくさんたくさん迷惑をかけ、思いっきり走って走って走り続けました。
そして、とうとう動けなくなって、ひとりぼっちになってしまったとき、いつも自分のことを大切にしてくれていた仲間たちが、必死になって迎えに来てくれます。
ものすごい勢いで疾走するちゅうちゅうを、モノトーンの絵と、擬音語たっぷりのコトバたちが、どきどき、わくわく、ちょっぴりこわくて、最後にはホっとする、そんな臨場感が鮮やかに描き出されています。