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たのしい絵本。| P_TREE編集部

絵本の話になると止まりません。── kaku-kaku lab.インタビュー vol.2

たのしい絵本。

国重安沙(以下、国重) あとはこれ。『3びきのやぎのがらがらどん』はご存知ですか?

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森行正(以下、森) …いや、知りません。ごめんなさい。

国重 この絵本は、みんなで仲良く暮らしてるんですけど…(ここから絵本の内容を説明)…っていう話で。これもハラハラ、ドキドキな話です。

 子供の頃からこういう物語りを読んでると、感受性が豊かになりそうですね。

国重 そうですね。あと絵がいいんですよ。とても真似できない絵というか。

 大人が見てもなんか怖いですよね。

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国重 そうとう怖いですよね(笑)。この怖さに結構はまってたのかもしれないです。あと母の語り口で「とんとんとん」とか歩いてる音があるんですよ。「がらがらがら」「がらがらどん」とか、「かたことかたこと」とか。読んでもらったときの語感というか、その感じが好きだったんでしょうね、私は。

 物語りより『音』ですか。

国重 音がすごい好きでしたね。そしてこれ、『どろんこハリー』。これも私的にはスーパーメジャーな話なんですけど、世間的にはどうなんでしょうか。

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このお話は、お調子者でお風呂が大嫌いなワンちゃんが主人公です。そのワンちゃんがお風呂に入れられそうになったんで、たわしをくわえて逃げ出すところから始まります。で、タワシを庭に埋めて家出をして…(ここから絵本の内容を説明)…調子に乗ってすごい不安になって、でも最後は良かったねっていう話ですね。

 これは子供には響きますね。

国重 そうなんですよ。すごい涙ながらにですよ、これも。あと「スガンさんのやぎ」って知ってますか?自由をもとめてるヤギがいるんですよ。脱走癖があって、外に飛び出していくんですけど…(ここから絵本の内容を説明)…っていう悲しい話なんですけど。これも心配性の母からの、「あまり遠くに行かないでね」っていうメッセージが込められているんだなって思いながら聞いてました。

 絵本の話になると止まりません(笑)。いやあ、面白いです。

こどもが暴れまくってる絵本のイベントに行ってから、絵本って面白いなあって。

 鹿毛(かげ)さんの絵本との出会いってどうだったんですか?

鹿毛泰成(以下、鹿毛) 保育園で読んでもらったのが最初です。

 その絵本って覚えてますか?

鹿毛 はい。『ぐりとぐら』とか『11ぴきのねこ』とかです。

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実際にはまりはじめたのは大人になってからです。たまたま福岡の実家に帰ったときに『おいでよ!絵本ミュージアム』っていうイベントに行ってみたんです。それがすっごい面白くて。こども達がすごい笑顔で暴れまくってるんですよ。

 暴れまくってましたか(笑)。

鹿毛 元気に走り回ってた、ですね(笑)。

 それはどんなイベントなんですか?

鹿毛 毎年テーマは違うんですけど、最初に行ったときは『ぐりとぐら』の巨大な絵が展示してあったり、新しい作品を紹介したり、絵本作りのワークショップなんかをやってました。今でも毎年、できる限り行ってるんですけど。回を重ねるごとに、どんどんいい感じのイベントになってきてるんですよ。

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国重 私も一度行ったんですけど、作品とか作者ごとにブースがきちんとあって、真ん中にこども達が遊べる広場があって、そこは絵本を読んだり、はしゃいでもいいっていう空間になってて。もうほんとにすごいギャーギャー言いながら(笑)。東京の美術館ではあんまりないよね。

鹿毛 うん、ないね。

国重 レオ・レオニ展とかいっても、結構お行儀いい感じでしたし。

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鹿毛 「美術館に行った」っていうんじゃなくて、「遊びの広場に行った」っていうような。

 その遊びの広場の中心に『絵本』があった。

鹿毛 そうです。

 こどもたちが楽しく遊んでいる中心に『絵本』があるっていう場が心地よかったということですか?

鹿毛 もともとは古本を集めていたんですが、ふと「次は絵本集めたら面白いんじゃないか?」って思って。前から個人図書館みたいなことをやってみたいなって思ってたんですが、そのイベントに行ってからは「子供達が読む絵本を集めた図書館みたいなのがいいな」って。まあ夢ですけど。

 いわゆるこどもがいて、たのしそうな場が自分でもつくれるんじゃないかと。

鹿毛 ワークショップをはじめたのもそういうところだったんですよね。(鹿毛さんと国重さんは、Koeda+というプロジェクトチームで定期的にワークショップを行っています)こどもと何かできたらいいなとか。こどもの笑顔をつくれたらほんと面白いなっていうんで、いまの活動が続いている感じです。

 鹿毛さんにとっての絵本は、自分が好きというより、絵本を読んで喜んでるこども達がメインですね。

鹿毛 そうですね。絵本そのものももちろん好きですけど、大人になってから好きになったので、国重さんと違って読んでもらって好きになったっていうのはないです。逆にこどもの頃に「あまり読んでもらってない」っていう思いがあるんですよ。

 ご両親にっていうこと?

鹿毛 はい。コンプレックスっていうわけじゃないですけど、まあ親も忙しかったんで。

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鹿毛 (唐突に)…いやあでも本当に絵本っていいなって。昔は漫画なんか集めたりしてたんですけど、最近はもう面白くないなって。

 ああ―そうですか!

鹿毛 いまになって絵本とかみると面白いなって。絵も、ちゃんと勉強した方が、しっかりした絵を描いて、文章もちゃんとしてて、っていうのが多いですよね。

 漫画よりも絵本の方が楽しいって思うってことは、絵本って想像させるじゃないですか。その『想像』が読んでてワクワクするところなんだと思う。

鹿毛 もともとワクワクするようなことが好きだったんです。モノをつくって、完成を想像するのが好きだったんですよ。これをこうしたらどうなるのかな、っていうので、いまの仕事もその延長ですね。(鹿毛さんは建築関係の仕事をされています)

 そういったモノ作りをする際のワクワク感が、絵本を読んでてもあるんですね。喚起されるというか。

鹿毛 絵本ってけっこう短いじゃないですか。ページ数もある程度決まってるんで。その中にいろんな要素が入ってて、一応完結するわけじゃないですか。そのなかにちゃんとストーリーがあって、ページ数以上のものがたりがあって。それをこども達なんかは感じるんですよ。

 確かに絵本って何回読んでも色あせないですよね。

鹿毛 そうなんですよね。読むたびにどっかに新しい何かを発見するっていう。絵でも文章でもそう。ほんとすっごいおもしろいですよ。

(つづきます)

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鹿毛泰成(KAge yasunari)
1981年福岡県生まれ。建築の専門学校に進学。在学中に独学で家具製作やおもちゃ制作などにも積極的に取り組む。卒業後、東京の設計事務所で働き始め現在に至る。一級建築士の資格を取得したころから、建築の仕事の傍ら、昔からの目標だった『子どもを対象にしたモノづくり』のワークショップや、小学校での図工の授業の協力、環境教育のしくみづくり、絵本の収集や創作など積極的に活動中。

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国重安沙(KUnishige asa)
1984年東京都生まれ。農系学部から首都大饗庭研究室を経て設計事務所に就職。大学院生の頃に『まちづくり』についての研究の他、ワークショップコーディネートの経験を積み、学外でも環境学習をベースとしたモノづくりワークショップの企画・運営を行い、現在も継続して活動中。小学校教諭の母の影響を受け、小学校の授業協力では張り切って講師を務めることも。

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 P_TREE編集部 ピーツリーへんしゅうぶ

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