連載
ママのため息| マーフィー恵子

【第22回】出産にまつわる、つぶやき

この半年で出産を迎える知人がたくさんいる。まあるいお腹を抱えていたあの頃が懐かしい。今思うと、妊娠中はなんだかぽわーっとしてハッピーな日々だった。特に体重が20kg増えた1人目のときは、外見も中身も緊張のキの字もないのだった。

妊娠10ヶ月という期間は、本当によくできていると思う。これより短いと、これから生まれてくる赤ちゃんに対しての愛情が十分育たないし、これ以上長いともう重さと数々の症状で耐えられない。ちょうど、早く会いたい!と思い始める頃に生まれてくるのだ。だから、陣痛も耐えられる。

この間、動物園にいて、カンガルーみたいに胎児みたいな状態で生まれて、袋で育てるっていうのもいいなぁと思った。親も子も楽そうだ。うざったい時?は袋に入れられる。ベイビーもお腹がすいたり、眠くなったらお母さんの袋にモゾモゾと入ればOK。人間の赤ちゃんみたいに、寝ぐずったり、お腹すいた~と泣く必要がない。

それに、抱っこすると他に何もできないけど、袋に入れれば色々な用事ができていい。コアラもいいな。赤ちゃんが背中にしがみついていて、母親は手が自由に使える。(人間の子は首が座っておんぶできるようになるには数ヶ月かかる)

それにしても、人間はお産になぜあんなに苦しむのか。私が病院にいて、これから、という時、分娩室から恐竜の鳴き声みたいなものすごい音が聞こえてきて、かなり引いてしまった。どんな痛さなの?あの声は。コワ~。でも実際、自分にその時が来ると、叫んでいた人は体力があったんだ…とわかった。

私の見聞では、オーストラリア人の方が日本人に比べて、痛みに弱い。すぐ麻酔を打とうとするか、叫ぶかパニックする。(ダンナさんの話や、病院での経験からの推測ですが…)

ドクターまで、日本人はがまん強い人が多いねと言う。お産はそんなに苦労すべきでない、という考え方から麻酔を打つ人も多く、それも一理ある。

でも、何人だって痛いのは同じ。日本人が痛みを堪えられる人が多いのは、やっぱり陣痛を受け入れようという自然と備わった姿勢からだと思う。お産は軽い人もいるけど、他の動物と比べると、やっぱりそれなりに大変だ。不思議。

その昔、原住民のアボリジニの女性たちは、一族で移動中に産気づくことがよくあったらしく、他の人たちが歩いている間に、しゃがんでポンと産み落とし、またすぐ赤ちゃんを抱いて群れに追いついて歩いていったそうな。

ある助産婦さんが言っていた。まだ自由なポーズで出産するアクティブバースが世間一般で広まっていなかった時に、あるアボリジニの女性が、好きな格好で生ませて!と言って四つん這いになって円を描くように腰を降り出したとか。

やっぱり人間も動物。科学文明が発達する前は、本能が今より働いていたはず。ずっと昔はお産も、もしかすると今より軽かったんじゃないかと思う。あんまり理性をのけてしまうと、立ち会ってくれているダンナさんに罵声を浴びせそうで怖いですが(笑)、ケアンズの病院での出産はかなり自由にさせてくれるので、この機会に自分の本能の声を聞いてもいいかもしれない。

痛いと言っても必ず終わりのある痛み。もうすぐ赤ちゃんに会えると思えば乗り越えられる。狭い産道を通ってくる赤ちゃんの苦労を思えば勇気100倍?あっと言う間に生まれることもあるし、まさに案ずるより産むが易し。これから出産の人、がんばって下さいね。

(リビング・イン・ケアンズ誌2001年7-8月号に掲載)

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マーフィー恵子

マーフィー 恵子Keiko Murphy

Pouch Quality Aussie Gifts
オーナー

93年よりオーストラリア、ケアンズに在住。「ハートに響く異文化体験のトビラ」をモットーに、地元企業と日本人マーケットをつなげるPRやイベントを手がける会社 JC Creations を経営。1995年フリーペーパー「リビングインケアンズ」を創刊。2011年に出版事業は売却。2012年4月に地元の良いモノ・素敵なライフスタイルを紹介するセレクトショップ「パウチ」をオープン。著書に「家族でケアンズ最強ガイド」(講談社)がある。執筆記事はこちら
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