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たのしい絵本。| P_TREE編集部

たのしい絵本。── kaku-kaku lab.インタビュー vol.3

kaku-kaku lab.インタビュー vol.3

絵本は基本ネタバレ。でも奇をてらった面白さとは違う魅力がある。

国重安沙(以下、国重) 今日は森さんとお話しするっていうことで、絵本のことをずっと考えてたんです。
いま『ネタバレ』って言葉があるじゃないですか。たとえば映画でも結末知っちゃったら見なくていいみたいな。でも絵本って、何度読んでも面白いんです。
落語が好きでよく行くんですけど、落語もネタバレですよね。忠臣蔵だって、日本人のソウルストーリーっていわれてるくらい、あれもネタバレしてるけどもみんな面白いって見るじゃないですか。そのなんだろう、「奇をてらった面白さとは違う魅力っていうのがある」っていう共通点に惹かれるのかなって。何度味わっても毎回違う面白さを味わえるというか。

森行正(以下、森) ひとりで読んでいる時と、お母さんと一緒に読んだ時とでも違う感じ方をするだろうし。だから大人になってからも読むに堪えうるというか、面白いと思えるんでしょうね。

国重 絵を眺めているだけで、好きなページ、嫌いなページがあったりして、別に話を追いかけてなくもいいかなと思うんです。さっきの『ちゅーちゅー』とか『ハリー』とかって、すごい調子にのってるシーンでは、自分も何でもできる気がしてるんですけど、すごい寂しいシーンでは、ほんとにもう涙がぶわーって出てきたりして、子供ながらにも本当に寂しくて。喜怒哀楽が詰まっているというか。ドキドキポイントはみんな違うと思うんですけど、それでもあんな数ページでそれだけ感動できるっていうのは、やっぱり心拍数も実際あがってるでしょうし。そのドキドキって大人になってからも残ってるんじゃないかと思ってて。

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 最近ではお二人で絵本作りをしているとか。

国重 はい。

 絵本を作るときの担当はどんな感じなんですか?

鹿毛泰成(以下、鹿毛) 物語りは一緒に考えて、絵コンテレベルは一緒に。で、僕が「こんなのどう?」ってキャラクターを考えて、「じゃあこういうストーリーどう?」って話しはじめて詰めていく感じです。実際描くのは僕で、最終的な文章は彼女に考えてもらいます。

国重 「こういうのどうかな?」って聞いてくるので、「その顔はなんか違う」とか言うと、なんかプンプンしたりしてるんですけど(笑)。「やっぱ絵本なんだから楽しいだけじゃなくて教育的要素も必要だよね」とか「やっぱ読んでビックリしてもらわないとまずいよね」とか言いながら、「じゃあどうしよう?」って二人でアイデア出しをやってます。絵の方はやっぱ大変そうなので手伝いたいんですけど、「ひとりでやりたいのかなー」って思ってあんまり手を出さないようにしてます(笑)。

 ちなみに、お二人の活動名なんてあるんですか?

国重 はい、いちおう作りました。恥ずかしいんですけど…。

鹿毛 「kaku-kaku lab.(カクカクラボ)」っていいます。「鹿毛(かげ)」と「国重(くにしげ)」で「か」と「く」で「かくかく」です。

kaku-kaku lab.の絵本をちょこっとだけご紹介

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「コンセプトはいろいろだったのですが、知育っぽい要素を入れることを大切にした絵本です」と、国重さん。


ひと部屋は完全に絵本部屋。床が抜ける恐れがあるので、もうRC造以外には住めないです(笑)。

 絵本はどのくらい持っているんですか?

国重 どのくらいだろう?500冊くらい?いちおうリストにはしてるんですけど。

鹿毛 500冊以上はあるね。(注:ちゃんと数えてみたら約950冊あったとのことでした!)

国重 家の中では、もう絵本の方が人間様よりスペースをとってしまっているような。

 絵本てけっこう重さもあるから…。

鹿毛 そうなんです!前に住んでいた家が木造の2階だったので、「絵本の重さでつぶれるんじゃないか」って心配になって(笑)。今の家にに引っ越す時には不動産屋に「もうRC造(鉄筋コンクリート造)じゃないと無理です」ってリクエストして。いまの家は2部屋あるんですけど、ひと部屋は完全に本だけです。

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国重 いま絵本用の本棚をつくっているところなんです。「建築を志すものとしては本棚くらいは自分でつくったら?」って言ったら、ほんとに作ってる(笑)。

鹿毛 いちおう自分で設計して施工までやります。でも夜遅く帰ってくるとあんまり大きな音出して作業できないので、徐々にやってます。

文章が読めなくてもストーリーが感じられるのが絵本。だから絵本には言葉の壁はあんまりないんです。

鹿毛 この絵本を自分だけで持ってても仕方ないなっていうか、いろんな人に読んでもらいたいっていうのもあって。

 そもそも、絵本が好きで、その絵本をこどもに見てもらいたいっていうのがあるわけですよね。

鹿毛 はい。だからいろいろと紹介したいんです。あまり知られてないけど、「こんなに面白いのか!」っていう絵本は、洋書でけっこうあるんですよ。絵本のいいところって、言語関係なしに絵だけでも楽しめてしまうっていう部分もありますよね。

国重 英語でもフランス語でもけっこういけますよ。まったく想像がつかない言語のものでも何となく分かって。ちゃんと笑えますし。

鹿毛 こどもの方がそういうのは敏感ですね。大人は読もうとするじゃないですか。例えば英語だったら頑張って英語で。でもこどもはぜんぜんわからないので、絵だけで物語りを想像して覚えるから、お父さんとかに説明するらしいんですよ、「こういうお話の本を読んでくれ」って。お父さんはわからない。「そんな本はウチにはない」とか言って。で、こどもが持ってきたら「これ洋書じゃないか」って(笑)。でも子供はそのストーリーをちゃんと分かってるという。文章読めないのに絵だけでストーリーを感じてる。

 そこは絵本の面白いところですね。絵だけ見て、ぜんぜん違うストーリーを想像したとしても、「どう感じるか」って言う部分に間違いはないわけですからね。

鹿毛 『アンジュール』って言う犬の絵本があるんですけど、絵だけで成立しているやつで、ほんともう簡単な鉛筆みたいなものでラフにスケッチみたいに描かれているんですけど、ほんとファンが多い絵本で…

と、まだまだ絵本の話は続くんですが…。
そんなカクカクラボのお二人に、絵本のたのしさを教えてもらう連載がはじまります。近々アップしますので、よろしければご覧ください。

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(おわり)

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鹿毛泰成(KAge yasunari)
1981年福岡県生まれ。建築の専門学校に進学。在学中に独学で家具製作やおもちゃ制作などにも積極的に取り組む。卒業後、東京の設計事務所で働き始め現在に至る。一級建築士の資格を取得したころから、建築の仕事の傍ら、昔からの目標だった『子どもを対象にしたモノづくり』のワークショップや、小学校での図工の授業の協力、環境教育のしくみづくり、絵本の収集や創作など積極的に活動中。

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国重安沙(KUnishige asa)
1984年東京都生まれ。農系学部から首都大饗庭研究室を経て設計事務所に就職。大学院生の頃に『まちづくり』についての研究の他、ワークショップコーディネートの経験を積み、学外でも環境学習をベースとしたモノづくりワークショップの企画・運営を行い、現在も継続して活動中。小学校教諭の母の影響を受け、小学校の授業協力では張り切って講師を務めることも。

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