連載
ママのため息| マーフィー恵子

【第6回】ケアンズキッズの日本語事情

外国で子供を育てる中で、ぶつかる壁の一つに「言葉」がある。まぎれもなく自分のお腹から生まれた子供が、自分と違う言葉でものを考えるというのは、複雑な気持ちのするものだ。日本人の血が流れている限り、子供に日本語を理解してもらいたいと思うのは当然の人情。

しかし!現実は親が日本語を話せるから子供も自然と、というほど甘くない。わかってはいても夫が英語しか話さない場合、夫婦の会話は英語になってしまって、家庭内ですら日本語環境を作るのは難しい…。たとえ親2人が日本人でも、地元の幼稚園や学校に通っている子供の兄弟同士の会話は英語、なんて声もよく聞く。バイリンガルの子供たちの後ろには、親の強い意志と努力があるのだ!

3歳の娘さんのいるFさんは、「一番効果があるのは日本人のお友達と遊ばせることですね。子供同士、すぐに言葉の壁なんか超えちゃうみたいですよ。自然と日本語を話すようになります」と言う。

「本気で子供に日本語を習得させたかったら、とにかく根気よく日本語だけで話しかけることですね」と言うのは、5歳の息子さんのお母さんでもあり、公文ケアンズ校を経営されているYukoさん。子供が英語で話しかけてきても、あくまでも日本語で「それはよかったね」など返事をするのが大切なのだとか。

お母さんが英語と日本語両方を使うと子供はややこしく感じるはずだとも。日本人には日本語、オーストラリア人には英語、と子供は自然に切り替えができてしまうらしいのだ。

「最初はお互い通じ合おうと思わないで、とにかく日本語で言うんです。冷蔵庫から出してきて、とか。すると冷蔵庫って何?という風に少しづつ語彙が増えます。小さいうちは、お母さんが繰り返して、とにかく子供に口を動かせることが大事ですね。日本語のあごと舌の動き方を覚えさせるんです」とにかく幼児のうちに始めるのが成功のコツ。

公文では、日本語の読み書きに重点を置いている為、普段日本語の環境にいない子供は、意欲がなくなってしまうという理由で入塾をお断りすることもあるとか。まずは話したり聞いたりする環境を作ることが大事なのである。そうなると、オーストラリア人の夫を持つ人は彼の理解が必要だ。私は子供には日本語だけで話すわよ~と強気に出よう。(夫も一緒に日本語を覚えてくれたら一石二鳥ですね)

子供の頭は本当に素晴らしい。何色にでも染まる。たくさんの色を使って子供が好きな絵を描けるように、絵の具箱をいっぱいにしてやるのは親の務め。将来どんな大作ができるかは、親の努力に十分にかかっているのだ。

(リビング・イン・ケアンズ誌1999年9月号に掲載)

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マーフィー恵子

マーフィー 恵子Keiko Murphy

Pouch Quality Aussie Gifts
オーナー

93年よりオーストラリア、ケアンズに在住。「ハートに響く異文化体験のトビラ」をモットーに、地元企業と日本人マーケットをつなげるPRやイベントを手がける会社 JC Creations を経営。1995年フリーペーパー「リビングインケアンズ」を創刊。2011年に出版事業は売却。2012年4月に地元の良いモノ・素敵なライフスタイルを紹介するセレクトショップ「パウチ」をオープン。著書に「家族でケアンズ最強ガイド」(講談社)がある。執筆記事はこちら
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