連載
ママのため息| マーフィー恵子

【第4回】ハーフのコドモ

人種のメルティングスポット(るつぼ)と言われる多民族国家オーストラリア。様々な文化的背景を持った人々が暮らす。

特にケアンズは「○○人街」といったものが一定地域に集中していないので、どんな肌の色の人もこの街に馴染んでいるように見える。むしろMULTI CULTUREを称賛している感さえあり、それぞれの文化をお互いに伝え合おうと、市から援助金が出て民間から講師を募ったワークショップが開かれているくらいだ。

ただし、「人種差別」というデリケートな問題については、歴史、戦争、個人的な感情など、複雑な要素が絡み合っていて簡単に表現できるものではない。白豪主義が取られていたくらいの国だから、差別意識は人によってはある。もちろんこのケアンズでも。

時々、子供がハーフだから学校でいじめられたら可哀相だな…なんて勝手に想像して心配になったりもする。きっと他の子と違うのが嫌で、おにぎり弁当なんて持っていかないだろう(サンドイッチにスナック、果物をポンと入れたこちら風のお弁当の方が、作る方は楽でいいけど)。

片親が外国人であるほとんどの子供が、ある時、自分は何者かという問題で悩む、と聞いた。私たち日本人はこの国では外国人。全てが違うから心の中で割り切れてしまう。けれども2つの血の入った子供たちは、自分のアイデンティティを確立するのに時間がかかるのだろう。

子供が産まれて、自分の中に受け継がれてきた血とか、子供がこれから育っていく環境とか、国とか、過去から未来まで、とにかく今までとは違った色々なことが気になるようになった。今さら日本の歴史の本を読んだりして。

私事だが息子は日本の暦で言う「文化の日」に産まれた。そんな偶然もあって、誕生したとき、日本人の血が混ざっていることを誇りに思えるような人間に育って欲しい、と心から思ったものだ。こんな行事が日本ではある、ということだけでも伝えたくて、五月人形を飾ったり、鯉のぼりを取り付けたりしている。

故郷も行事も言葉も食べ物も、たくさんの事が違った形で体験できる環境に産まれた子供たち。「ハーフ」ではなくて、むしろ「ダブル」であることの豊かさに気付いて欲しい。そして、オーストラリアは今後、もっと増えていくであろう「ダブル」の子供たちがのびのび育つような、懐の広い国であることを願っている。

P.S. 前回、ジェイクという名前の漢字について書いたら、素適なSuggestionをいくつか頂きました。その中の一つが「自絵空」・・・アーティスティックで拝みたくなるような名前です。ありがとうございました。

(リビング・イン・ケアンズ誌1999年7月号に掲載)

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マーフィー恵子

マーフィー 恵子Keiko Murphy

Pouch Quality Aussie Gifts
オーナー

93年よりオーストラリア、ケアンズに在住。「ハートに響く異文化体験のトビラ」をモットーに、地元企業と日本人マーケットをつなげるPRやイベントを手がける会社 JC Creations を経営。1995年フリーペーパー「リビングインケアンズ」を創刊。2011年に出版事業は売却。2012年4月に地元の良いモノ・素敵なライフスタイルを紹介するセレクトショップ「パウチ」をオープン。著書に「家族でケアンズ最強ガイド」(講談社)がある。執筆記事はこちら
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