連載
ママのため息| マーフィー恵子

【第1回】ケアンズ出産事情1

この2年で、ケアンズで出生届を出した日本人ママのベビーはなんと65人いるという。平均すると1ヶ月に3人近くの新しい命がケアンズで誕生している計算だ。

妊娠、出産は万国共通の一大イベント。私もケアンズでこのイベントを終え、新しい家族と共に人生の舵を大きく切り始めた。
ケアンズは小さな町なので、産婦人科の専門医は3人しかいない。出産をする病院は2ヵ所。日本と少し違うのは、各機関が独立していること。

例えば私の場合、かかりつけの女医さんの所で妊娠が分かり、産婦人科の医師に紹介状を書いてもらった。そして血液検査は別のクリニック。その後の妊娠検診は専門医。超音波撮影は別の専門医、そして出産は私立病院、両親学級も病院主催のものだった。ただし、専門医にかからなくても良いし、出産までの過程の選択は人さまざま。

妊娠したと言っても最初の数ヶ月はお腹もそんなに重くないし、大した日常の変化はない(1日に13時間くらい仕事をしていた私はつわりになる余裕さえなかったらしい・・・)。
月1回(妊娠後期は2~4回)の検診。ここは田舎だから、ほとんど待ち時間もない。楽。ドクターに診てもらう前は助産婦さんが色々と話しをしてくれ、とても役立った。
「椅子の高さを調節して足をこのあたりに置くと腰の痛みが和らぐわよ」とか、教えてくれることが実践的なのだ。

一方、ドクターは「妊婦さんはみんなそうです。問題ありません」いつも同じ顔でこう言った。気持ちいいくらいの放任である。体重なんて計りもしない。
では何で夫婦揃って検診に行くかというと、モニターでベビーが見れるから。健気に育っているのを見て、男の子かな、女の子かな、と話しているのが楽しかった。

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▲私が家族の写真を撮ることが多かったので、妊娠中や出産時の自分の写真はほぼなし。。1枚、妊娠中に写ってたのがこれ。シドニー2000のオリンピックトーチリレーしているところですね。娘は2000年10月に誕生しました。

今思うと妊娠中ってなんか楽しい。テープを持っていくと録画もしてくれた。検診にはほとんどパートナーと来ていたのには感心。日本もそうですか?

日本の『たまごクラブ』などの雑誌を読んで、日本の妊婦さんの気の使いようにビックリ!ずぼらな私でも食べ物には多少気を使ったけど、所詮オーストラリア。海草とか小魚とか手に入りづらいし、鉄分とカルシウムを採れ、と毎日のようにステーキとヨーグルトを用意された…。

体重は、何をしても増えるのが面白くて、放っておいたら出産までに21kgも増えてしまった。お腹周りを測ってみると105cm!

雑誌と言えば、オーストラリア版のものを見ると、感性の違いをいやでも感じる。例えば胎児の成長過程のイラスト。日本のは挿し絵が可愛いくて、何となく夢があり、自分の赤ちゃんへの愛情を感じる。

一方オーストラリア版は、内臓とか赤ちゃんの顔のシワとか詳細が描かれていて、私から見るとグロテスク(?)でさえあった。感想は「こんなに私の腸が押されちゃってるんだ」みたいな…。

こちらの妊婦さんは、いわゆるマタニティドレスってものを着ている人は少ない。臨月でもバリバリ働く人も多く、出産後は問題のない場合、2日後には退院。思い返してみると、この国は妊娠、出産をとても自然にライフスタイルに取り入れるところが、私には合っていたと思う。

(リビング・イン・ケアンズ誌1999年4月号に掲載)

〈マーフィー恵子さんの近況〉

「昔のことは、ほとんど振り返らない私ですが、
 自分で書いた記事を読んで、こんな時期もあったなーと
 温かい気持ちになりました。

 今や、長男は16歳、長女は13歳。
 出版ビジネスを止めてお店を作ったときは、
 カーテンレールを取り付けてくれたり、
 色々な設定を手伝ってくれたり。
 学校で経営の授業があるので、
 違う視点で親がしていることを見てくれているようです。
 本当に子どもの成長はあっという間ですね!」

〈2013年10月〉

 

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マーフィー恵子

マーフィー 恵子Keiko Murphy

Pouch Quality Aussie Gifts
オーナー

93年よりオーストラリア、ケアンズに在住。「ハートに響く異文化体験のトビラ」をモットーに、地元企業と日本人マーケットをつなげるPRやイベントを手がける会社 JC Creations を経営。1995年フリーペーパー「リビングインケアンズ」を創刊。2011年に出版事業は売却。2012年4月に地元の良いモノ・素敵なライフスタイルを紹介するセレクトショップ「パウチ」をオープン。著書に「家族でケアンズ最強ガイド」(講談社)がある。執筆記事はこちら
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